2017年7月24日月曜日

7月教養講座を終えて  by長谷川

今月も日本の素晴らしい芸術品の伝統を受け継ぐ貴重なお話を伺いました。

講師は、大阪教養講座に初めてお越しいただきました真田紐師の和田先生です。
真田紐がこれまであまり多くを語られていなかったのには、美術品や日用品を纏める道具としての要素の一方で、戦で使う武具の一つとしても大きな役割を担っていたことにも理由があるそうです。真田紐は、古くは、ネパールから大陸を渡って仏教とともに伝えられたと言われているそうですが、忍者の郷である伊賀のあたりが発祥だと言われているそうで、その意味合いもうなづけます。


また、御道具の入った桐箱の中身がどのようなものなのか?どの家のものなのか?・・・箱を開けなくても結ばれた真田紐の柄を見れば一目でわかる役割をはたしていたそうです。
驚くべきは、その紐の結び方にも家ごとに定めがあり、他人が開けたかどうかがすぐにわかるような工夫もされていたそうで、現代風にいうとパスワードのような役割を果たしていたそうです。


真田紐の目録には、一切どこの家のどの用途で作られているのかは書き残されていないので、秘密のベールに包まれていたそうです。伝統を受け継ぐためには公開が大切だとの判断から、和田先生の代になって初めてその秘密をお伝えするようになったらしいです。
昨日の講義では、NHK大河ドラマ「真田丸」にご指導にいかれた時のお話や、三谷幸喜さんの脚本に「編む」を「織る」という表現に変えてもらったりという様々なエピソードも絡めながら、楽しくお話頂きました。
和田先生もどの視点からお話しするかを絞るのが難しいとおっしゃっていたように、お茶人にとっては、身近なお道具の一つですが、その真髄はまだまだ奥深いものがあるようです。ぜひ、またこれを機会に真田紐の魅力にも触れていきたいものです。

和田先生、そして奥様、今後益々のご活躍を御祈念申し上げます。ありがとうございました。


大阪四青年部連合会 
会長 長谷川幸則

第489回 和田伊三男先生「真田紐の秘密」

7月21日金曜日は、真田紐師の和田伊三男先生にご講義いただきました。

茶道具の桐箱で馴染みのある真田紐ですが、もとは大陸から伝来した細い織物が元であり、強靭なことから荷紐や馬具に使われた他、戦国時代には真田幸村が甲冑等に使用し始め武具としても広まった歴史があるそうです。
その後、千利休が道具箱への使用を好まれ、時代を経て各流派の御家元や茶道具職方等が使う真田紐のそれぞれに違った素材・色柄が定められた「御約束紐」として現代に伝わったことや、これをもとに道具の真贋を見極める判別方法などもお聞かせくださいました。

ご講義の中での貴重な映像の他に、数多くの写真や様々な真田紐も併せて展示くださり、ご講演後に拝見いたしました。






2017年7月4日火曜日

黒田先生のご講演を聴講して by長谷川

長谷川会長の感想が届きましたので、掲載いたします📨

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明らかにいつもと会場の空気が違った。私はいつもより遅れて控え室に入り、黒田先生と名刺交換。先生とは初対面だったが、颯爽としたお姿に大手外資系のキャリアマネージャーといった印象を受けた。ふと興味が湧き、先生は普段どんな格好で作品に向き合っておられるんですか?とお尋ねしたかったが、既に講義2分前になっていて先生のマイクがセットされるところで、そのまま会場へとご案内した。
先生がご入場されると聴講者から割れんばかりの拍手。
当代からの第一声に固唾を飲んで見守る受講者と先生とのコミニュケーションがスタートする。

まずは黒田家がどのように竹という素材と向き合い、代々どれほど作品作りに手間暇をかけてきたのか、DVDを見ながらイメージが膨らんでいく。
黒田先生から千家十職としての千家との関わり、仕来たりや役割などのお話しを聞きながら、皆さんの想像力が更に膨らむ。
十四代を継がれた先生の作品作りにかける情熱、伝統を継承していくことの難しさ、気候変化に伴う収穫期の変化のこと、多くの学びをいただいた素晴らしいご講演だった。
さて、凛とした雰囲気の黒田先生のお人柄は実に気さくで、講義後の雑談の中では、年頃のお子様を育てる母親としてのご苦労など、大変親しみの湧く色んなお顔も垣間見ることができた。
黒田先生の今後の益々のご活躍を御祈念申し上げます。

第488回 黒田正玄先生「黒田家の竹工芸」 

6月29日木曜日には、千家十職の竹細工・柄杓師 黒田正玄先生をお招きしてのご講演でした。
先生は2006年より千家に出仕、2014年に「十四代 黒田正玄」を襲名されて、初の女性当主となられました。

初めに先生がご持参くださった映像にて、竹の素材について学びました。
黒田家では毎年、秋は作品に適した良質な竹を各地の竹藪を巡り探して伐採、冬の間の
油抜きという過程を経て、春先には天日干しという素材作りをされるそうです。
保管する段階では良質な竹のみが選別され、ここで半分ほどの竹が選外となるそうです。
割れや狂いが生じることがあるため、この後に更に5年以上、ものによっては10年20年もの年月をかけて寝かせて吟味するということで、素材としての竹がようやく完成する過程を知ることができました。

その後のご講義では、黒田家の歴史や、伝統を継ぎつつも女性ならではの作品を模索される先生の思いを語ってくださいました。
講義終了後には質疑応答の時間があり、聴講者からの様々な疑問にお答えくださいました。