2018年11月17日土曜日

第502回 下坂玉起先生「茶の湯の羽箒について」

11月12日、本年度最後の教養講座は、羽箒研究家の下坂玉起先生にお越しいただきました。
羽箒は本来茶人の自作であったとご説明くださり、流派によって様々な形状や使用方法があることをご教示くださりました。
羽箒に使われる鳥についてもスライドにて特徴や生態をご紹介くださいました。
また会場にも多数の羽箒を展示くださり、珍しい羽や細部に表れる「好み」について丁寧に教えてくださりました。


第501回 太田達先生「数寄とブリコラージュ」

10月11日は、有斐斎弘道館代表理事の太田達先生にご講演いただきました。演題は「数寄とブリコラージュ」です。
ブリコラージュとは「ありあわせの手段・手法でやりくりすること」を意味するそうです。
その土地の、その季節のものをもとに構成される数寄の茶は「ブリコラージュ」そのもので、外国の方に茶道を説明するのに便利な言葉であると教えてくださいました。
国内外で先生が関わってこられた斬新な茶会のスタイルを写真スライドで紹介くださり、それぞれの土地の文化・芸術と茶道が融合する新しい茶の湯の世界について、楽しくご教示くださいました




2018年9月13日木曜日

第500回記念 鵬雲斎大宗匠特別講演会

第500回茶道教養講座は、鵬雲斎大宗匠をお迎えして特別講演会を開催させていただきました。
また講演会に先立ちまして、500回の節目を記念する式典も執り行わせていただきました。
会場となったグランキューブ大阪イベントホールには720名の方々にお集まりいただき、大盛会のうちに終えることができました。

ご講演では、大宗匠のお話になる御心のこもった一言一言に、相手を想い、敬うことの大切さを教えていただきました。
茶道を通じて学ぶべき様々なことや、我々日本人がこれまで守り大事にして来たものは何なのか、大宗匠のご経験もご紹介くださりながら、優しい言葉と眼差しで私たちに多くのことを語りかけていただきました。

会場は時に笑いや涙に包まれ、とても充実した時間を多くの感動とともに会場全体で共有することができました。
ご講演が終わった後は舞台を降りられた大宗匠が皆さんお一人お一人にお声をかけながら会場を巡られて、大きな喝采は決して鳴り止むことがありませんでした。
私たちは500回というこの大きな節目を経験させていただき、茶道教養講座で学んだことをあらゆる機会で多くの人に伝えていく使命があること、そして茶道の発展、青年部の更なる成長に繋げていくことを改めて自覚する機会となりました。
この先迎える600回、700回に向けて、一講座ずつみなさまに充実した内容がお届けできるように、今後も精進して歩んでまいります。
今後とも裏千家淡交会大阪四青年部、そして茶道教養講座へのご理解とご参加をお待ち申し上げております。

大阪四青年部連合会
会長 長谷川幸則





2018年9月7日金曜日

第499回 萩井好齊先生「木目と木取り」

8月2日は指物師の萩井好齊先生にお越しいただきました。
スライドにて、普段使用されているお道具や作品になる前の木材をご説明
くださいました。
また切り方によって木目(柾目・板目)がどのように出るのかを図を描き
ながら解説くださいました。
柾目とも板目とも違う、稀に表れる独特な模様である「杢目」についても
多くの写真で様々な例をご紹介くださいました。
質疑応答の際には多くの皆様のご質問に丁寧にお答えくださいました。

萩井先生のユーモアを交えた楽しいご講義に皆さま熱心に聞き入って
おられました。




2018年7月24日火曜日

第498回 神津朝夫先生「茶会記の世界」

今月は神津朝夫先生にお越しいただき、茶会記に関するお話を聞きました。
昨年ご好評だった神津先生のお話ということもあり、多くの聴講者で90分間、熱気を帯びました。

私たちが普段大寄せなどで目にする会記は、主催者側がお客様に事前にお茶会の期待度を膨らませるための予告編で、主催者や亭主側からお客様へのメッセージがこれられたものですが、昔は茶会の終わっあとに亭主側が内容を記したものや、招待されたお客が記憶をたどりながらお茶事の様子を書き留めたものとがあり、それはまさに記録のためであったと言うお話は大変興味深いものでした。

ご想像の通り、同じ茶会について亭主側とお客側両方の記録が茶会記として残っているものもあるそうで、照らし合わすと記載が違うことがあるそうです。その具体例のご講義に皆さんも興味深く聞いておられました。

過去の茶会記を読み解きながら、お茶事には今も昔も主催者の明確なメッセージや時に遊び心が込められていて、それがまさにおもてなしの表現方法であること、そして、その受け止め方はお客ごとに様々な感じ方があって良いのであり、正確であることの重要性よりも、昔の茶会記のように後から振り返りながら相手の想いを受け止めるということが大切なのではないか、という神津先生のメッセージが心に残りました。

過去の茶会記は、当時の生活形式や政治的背景など様々なストーリーを現代の我々に伝えてくれる貴重な資料であることも、先生のお話から学ぶことができました。

連日猛暑日が続く中で今回も熱心な多くの聴講者の皆様にご参加いただき、盛会に終えることができました。感謝申し上げます。


大阪四青年部連合会
会長 長谷川幸則



2018年6月21日木曜日

第497回 谷端昭夫先生「信長と名物狩り」

今月は、裏千家学園講師の谷端先生にご来座いただき、いつもとは違った切り口でのお話を聴講しました。


まず、名物狩りとは、なんぞや。私の疑問からスタートです。調べてみると…
織田信長は1569年に京都と堺で金銀や米の代わりに名物(めいぶつ:有名な茶器や絵)を強制的に収集しています。とあります。
今回の谷端先生のお話は、前半部分は信長が収集していた数々の素晴らしい茶道具の紹介から始まりました。

それらは大変有名なお道具で見た目も作品としては素晴らしいものもありますが、中にはそれほど、美しいものでもないというコメント。なるほど。

それから当時お道具が今で言う仮想通貨のように投機商材のように、何万倍にも価値が跳ね上がるようになったと言うお話。

そのきっかけを作ったのも信長の名物狩り。

後半は、信長がこの名物狩りを単なる自分自身の収集だけを目的にしたのではなく、政治的手法、つまり日本を戦のない平和な国に治めるための手段として使っていたと言うお話をしていただきました。
信長は、戦国大名が手柄を立てた時、国や領土を与えるだけでなく、「価値のある名物」を与えることで信頼の深さを伝える方向性に価値観を変えました。

国や領土という下手に与えると力をつける武将が出てくることを恐れ、その代わりに名物を与えることで忠誠心をコントロールしていたのだそうです。
お茶が趣味嗜好のお客様をおもてなすためのものである現代とは違い、当時はお茶が国を治める、平和の手段として大いに重要なもの、機会だったことを改めて学ぶ機会となりました。

谷端先生、素晴らしいご講演ありがとうございました。



長谷川幸則









2018年5月23日水曜日

第496回 小林太玄先生「大切なこと」


今月は、大徳寺黄梅院ご住職の小林太玄老師にお越しいただきご講演いただきました。


真剣に「生きる」とは。
心を整えること。
質を見極め感じること。
茶道に見る禅のこころ。
その他、様々なこと・・・

「大切なこと」というテーマで、たくさんのお話を時間いっぱいまで語ってくださいました。
力強いお言葉が、聴講の皆様それぞれの心の琴線に触れたことかと存じます。
どうもありがとうございました。





2018年4月24日火曜日

第495回 池田俊彦先生「床柱について」

495回目の教養講座は、茶室並びに日本建築全般にご研究をしておられるイケダ数寄屋研究所所長の池田俊彦先生にご講義頂きました。

「床柱について」の演題で、茶室のなかで床柱がどんな存在として変遷していったのか、歴史の中で過去にみられる様々な形状やデザインについてご紹介いただき、茶室空間の中の重要な要素であるということを改めて確認いたしました。

その後、「柱」そのものについて、どのような特別な意味合いがあるのか視点を広げてお話しくださいました。

古事記の記載の中で神様を数える単位に「柱」の言葉が使われていることや、神社仏閣に見られる支柱という用途以外の「柱」の存在、そして諏訪の御柱祭のような祭礼行事の中での「柱」の概念など、様々な例をご教授いただきました。

日本語を改めて振り返ってみると「大黒柱」や「心の柱」のように我々の内面的なものを表現するときにも使われており、「柱」というものが精神性にも深く関わっていることを池田先生のご講義から発見することができました。

 先生のお話の中で特に印象に残ったのは、伊勢神宮神殿の中央に密かに存在する「心御柱」の話でした。神様の世界と人間の世界をつなぐ通信回路のような神聖な柱として、古来より連綿と受け継がれているということに感動し鳥肌が立ちました。

ご講義中に、茶室に訪れた豊臣秀吉が寄りかかっていたという床柱の紹介もありました。
戦国の世の秀吉は、ひと時こころを落ち着かせて窓から見える月夜を眺めながらどんな国つくりを夢見ていたのでしょうか?

とっても楽しい90分間はあっという間に過ぎていきました。
今回も多くのご聴講の皆様にお越しいただきありがとうございました。



大阪四青年部連合会 会長   長谷川幸則










2018年3月16日金曜日

第494回 今日庵業躰 泉本宗悠先生「茶花について」

寒い冬が過ぎ春の陽気がようやく私たちの前に姿を見せ始めました。

三月度の教養講座は、今日庵業躰の泉本先生にお越しいただき、茶花のお話をしていただきました。

茶事の趣向やお迎えするお客様、そして季節感などを考えて生ける茶花はおもてなしの大事な要素であり、茶花によってお客様とどのように対話をするのかをご教授いただきました。
また、教養講座のスタッフ達が生けた真行草とりどりの茶花について、一つ一つ丁寧にご講評をいただきました。

先生の歯切れのいいお話しは大変わかりやすく、そして時に会場を和ませるユーモアあふれるご講義で、聴講に来られた皆様も笑顔で会場を後にされました。

今回は先生からのご提案で、ビデオカメラを使って舞台上の茶花の表情をスクリーンに映し出しました。

角度の違いでずいぶん見え方が違うこともわかりやすくご説明頂き、新しい講座のスタイルに挑戦した素晴らしいひと時となりました。

お忙しい中、ご講演頂きました泉本先生に改めて御礼申し上げます。



大阪四青年部連合会 会長 長谷川幸則








2018年2月27日火曜日

今年度がスタートしました

2018年度も皆様のおかげをもちまして、53年目の教養講座をスタートすることになりました。
お家元始めご宗家の皆様、総本部、大阪四支部の先生方、そして熱心にご受講いただく会員の皆様に改めて御礼申し上げます。

今年度第一回目の講義は、哲学者、宗教学者でもいらっしゃる国際伝統藝術研究会会長の倉澤行洋先生にお越しいただきました。

控え室で名刺をお渡ししてご挨拶した時にお顔を拝見すると、なんとも柔らかな優しい笑顔で声をかけていただきました。
「長谷川さんは、幸則さん、私も行洋です。同じ  ゆきですね。」
御歳84歳をお迎えになるとは思えないほど凛とした佇まいで、とてもお元気な先生だなという印象を持ちました。

お題は「守る 破る 離れる 再考」
三年前の「守破離」のテーマのご講義をさらに深めて、新たな様々なご考察を紹介いただきました。

茶道などの芸道における守る・破る・離れるという三段階の修行過程の精神論、それはスポーツの修練とも通じるように思え、今まさに平昌オリンピックでの感動の裏にある秘話などと被るようにも感じました。

興味深かったのは、西洋にもこの「守破離」と似通った思想があるということで、その共通点と違いについてもニーチェの思想を例にわかりやすくご説明いただきました。
西洋と東洋両方の哲学、思想に造詣が深い先生の切り口は、まさに今のグローバル化社会への問題定義にも聞こえる意義深いお話でした。

あらゆる芸事や生き方にも通じる大変深いお話で、倉澤先生の世界観に会場全体が引き込まれる不思議なひと時でした。

御同行された秘書の朴さんとご一緒に見えなくなるまで手を振っていただくお姿から、先生のお人柄に触れることができる素晴らしい第493回目の講座となりました。


大阪四青年部連合会
会長 長谷川幸則

第493回 倉澤行洋先生「守る 破る 離れる 再考」 

2月23日は、国際伝統藝術研究会会長の倉澤行洋先生のご講義でした。

・「守」とは、「無我の心」をもって師の教えを忠実に守ること。
・「破」とは、修行を積んで得た「無我の我の心」が「守」を破ること。
・「離」とは、守る心からも破る心からもすっかり離れた「遊戯三昧」の境地。

この「守破離」と同じ解釈ができる思想について、西洋のニーチェ、川上不白、珠光を例に取って解説くださいました。

「守」・「破」を経て「離」の心でもてなす茶会とは、「夏は涼しく、冬はあたたかに・・・」の境地に至るのだという先生の最後のお言葉に感銘を受けました。